立冬と石蕗の花(つわのはな)

暖かい立冬も過ぎてはや四日。ずっと穏やかな天気が続いている。
徳島との県境に近いダム湖。湖面が硝子のように滑らかで静か。
舟に乗って釣りを楽しんでいる人たちもいる。周辺の山々の紅葉は
まだこれからというところだった。



冬来れば母の手織りの紺深し     細見 綾子
投函の封書の白さ冬に入る      片山 由美子
米一合磨ぐ指先や今朝の冬      田中 愛
冬に入る買ひ足しておく葛根湯    エリザベス


先日久しぶりに近くのお寺に行ってみたら、境内に石蕗の花が咲いていた。
初冬の代表的な花の一つ。葉が蕗の葉と似ているのでこの名前がついたと

いうことだが、石蕗の花はキク科である。海岸などに自生するが植栽もされている。



だんだん花が少なくなるこの時期、この花の黄色は水辺や足元を
ぽっと明るくしてくれるが、どことなく暗さを合わせ持っている
花でもある。



石蕗の花心の崖に日々ひらく     横山 白虹
つはぶきはだんまりの花嫌ひな花   三橋 鷹女


これら石蕗の花の暗さを感じさせる句に、妙に心惹かれるものがある。
いろいろなイメージを喚起し、さまざまに詠まれている石蕗の花。
非常に興味深い句材である。


石蕗咲いていよいよ海の紺たしか    鈴木 真砂女
静かなるものに午後の黄石蕗の花    後藤 比奈夫
石蕗の花逢わねばいつか遠い人     福田 幸子
石蕗の花腹を決めたる色であり     雨村 敏子
波高き伊豆の断崖石蕗の花       エリザベス