鰯雲

台風一過の昨日は、一日空が美しく、特に午後からは鰯雲が広がり、前日の台風から一転、生まれ変わったような素晴らしい空の光景であった。心が洗われるような空の青と雲の広がりだ。

鰯雲の句ですぐに思い浮かぶのは


鰯雲人に告ぐべきことならず  加藤 楸邨


このことは自分一人の胸の中にしまっておけばよい・・と、鰯雲の浮かぶ高い空を仰ぎながら思っている作者の気持ちに共感できる句だ。


いわし雲人は働き人は病む     相馬 遷子


人生の哀感を感じる、これも好きな句。鰯雲は人を遥かな気持ちにさせる。


鰯雲離島に勤務したる日も    エリザベス


夕焼けも美しかった。新しく生まれ変わったような昨日の空を見ていて天変地異も、もう終わりにして欲しいと心から願ったのに、残念ながら、今朝また大きな地震が起きてしまった。




ブログ掲載句の投稿結果

早いものでもう8月も終わり。一時は少し涼しくなったものの、また暑さがぶり返し厳しい日々が続いているこの頃。


ここで、このブログに今まで掲載した句の内いくつかを、新聞俳壇へ投稿した結果をまとめてみました。


入選句
二三日つづく雨らし茄子を植う  エリザベス
蓮の葉の一粒の水もてあそび
原爆忌畑はぐんぐん水を吸ひ


選外
雨音のいよいよ激し梅雨の雷   エリザベス
単線のドア開くたび蝉時雨
作り滝とは思へざる勢ひあり
雨に透くうすきむらさき茄子の花
朝月の少し欠けたる涼しさよ
まだ解かぬ祈りのかたち蝉むくろ


たくさん作っても、その内投稿できそうなのは10パーセント以下。その中で入選するのはほんのひと握り。その一握りを得るために、日々俳句に向き合っている訳ですが、それは決して無駄な努力ではないと思います。納得のいく言葉を見つけるまでのプロセス、結果を得るまでのプロセスこそが大切で、そこに充実感を感じます。


暑い中にも、空の高さや青さ、雲の形や動き、また朝夕に吹く風にふと感じる爽やかさに、少しずつ秋の気配も覚えることも。いよいよ本格的に秋の句を作る時が近づいています。



打ち寄する波に晩夏のひびきかな  エリザベス
爽やかや刷毛で伸ばせしやうな雲


終戦日


20数年前、俳句を学び始めた頃、歳時記で見た次の句に心惹かれた。


終戦日妻子入れむと風呂洗ふ  秋元 不死男


平和や反戦を声高に主張している訳ではないが、しみじみと訴えかけてくるものがある。この句で初めて知ったこの俳句作家、後に作者の経歴と句の背景を知った。


 「秋元 不死男(あきもと ふじお、1901年11月3日 - 1977年7月25日)は、神奈川県横浜市出身の俳人。本名は不二雄。島田青峰に師事し「土上」「天香」(1940)に参加。新興俳句運動に加わり、京大俳句事件に連座して1941--1943の間投獄される。戦後は「天狼」参加を経て「氷海」を創刊・主宰。」---Wikipedia


「作者は、治安維持法による俳句事件で2年間の獄中生活を強いられました。その間に平和に生活するということがいかに大切かを身にしみて味合わされました。風呂を洗って妻子を入れるという当たり前のことがいかに大事かを教えてくれます。」
ーー学習院大学の田中靖政ゼミ OB OG会 blog 深秋会より


日常の生活に根差しつつ、深く心に訴えかける力を持った俳句を目指したいものです。


裏庭に燃やす紙くづ敗戦日  エリザベス